すてきな幽霊(スーフィヤン・スティーヴンス)

きみがぼくのなかに何を見たか、教えて
それを何かの景色に変えて、まわりにとけこむようにするから
もしそれでもきみが息詰まる思いをするなら
ちょっと待って。その景色も変えるよ

べつに無理しなくていいんだよ。無理しなくていいんだ
どこかにぼくらふたりが成長できるところがあるから
そしてもし、ぼくのもとを去ることできみが満足するなら、行きなよ
きみを押しとどめることは、きみのすてきな幽霊を苦しめることになるだろうから

ぼくはただそこにいるきみの心のなかに
愛と快活さをもたらそうとしただけ
ぼくにふれたら手が切れちゃった?
そんなにぼくは鋭利? やっぱりぼくは厄介ものなのかな

悔恨を引きずらないで。そんなんじゃだめだよ
どこかにぼくらふたりだけでおしゃべりできるところがあるから
でも、ここにいることがかなしみしかもたらさないなら、行きなよ
ぼくにはきみにかけられる魔法の言葉なんてもってないから。それを持ってるのは、幽霊だけ

きみがぼくにくれたもの、まだ持ってるよ
アノインティングオイルよっつと、きみがつくったペーパーウェイト
もちろん、それを持ち運びはしなかったし
きみの幽霊の名のもとに、それを埋めてしまったりもしなかったよ

べつに無理しなくていいんだよ。無理しなくていいんだ
きみに抱かれてぼくが眠ってしまうまで、ここにいて
でも、ぼくのもとを去ることできみが満足するなら、行きなよ
きみを押しとどめることは、きみのすてきな幽霊を苦しめることになるだろうから

土曜、夜、10時15分(キュアー)

土曜夜の10時15分
蛇口から水漏れ
蛍光灯がそれを照らす

ぼくは座ってる
キッチンシンクのそばに
そして蛇口から水漏れ
ぽた、ぽた、ぽた

待っている
電話が鳴るのを
そしてぼくは思う
彼女はどこに行ってしまったんだろうって

昨日をなつかしんで
泣いている
そして蛇口から水漏れ
ぽた、ぽた、ぽた

何も変わらない

ポップトーン(パブリック・イメージ・リミテッド)

日本車で森林までドライブ
道路のタールに溶けたタイヤのゴムの匂い
いまとなっては後の祭り
木陰に裸で突っ立つ
カセットから流れるポップトーン
きみの面影が忘れられない
きみは、ぼくの頭にぽっかりと空隙を穿った
草むらや沼地なんかに隠れるもんか
身体がぬれそぼり、熱が奪われていく
カセットから流れるポップトーン
血潮流れるこの心臓
身体を探す
ぼくのプライドは危うく損なわれるところだった
イギリスのこんな片田舎にまで賞賛はかけめぐる
ポップトーン

君を探しに世界中(レックレス・エリック)

ぼくが若かったころ
お母さんがこう言ったんだ
世界のどこかにひとりだけ、ぼくのための女の子がいて
その子は、タヒチに住んでるかもしれないって

だから、世界中をかけめぐって
世界中をかけめぐって
その子を探すんだ

それとも、もしかすると彼女はバハマにいるかもしれない
カリブ海が青くきらめくバハマ
彼女は、南国の月明かりのもと、涙を流してるかもしれない
なぜって、誰も彼女にぼくのことを伝えてくれなかったから

だから、世界中をかけめぐらなきゃ
世界中をかけめぐらなきゃ
ただ彼女を探すために
世界中をかけめぐるんだ
世界中をかけめぐる
彼女が潜んでるところを突き止めるために

なんだってぼくはこんな雨のなか
女の子を引っかけるためにうろついてるんだろう
だんだって世にはこんなにも女の子があふれているというのに
ぼくの目には涙がいっぱいたまっているんだろう

南国の太陽の下
南国の浜辺のどこかに彼女は寝そべってるのかな
つよい日差しにぐったりしながらも
ぼくがもうすぐ現れることを願って

ぼくは、陽光降り注ぐ浜辺で彼女といっしょに寝そべらなくちゃ
彼女の小麦色の肌をなでながら
それで、一年かそこらで
家庭を築くんだ

だから、世界中をかけめぐらなきゃ
世界中をかけめぐらなきゃ
ただ彼女を探すために
世界中をかけめぐるんだ
世界中をかけめぐる
彼女が潜んでるところを突き止めるために