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たんじょうび(シュガーキューブス)

彼女はあそこの家にすんでいて
どくとくの世界をもっている
彼女は指と歯で世界をがっちりつかむ
彼女は五歳

虫をひもでゆわいつけ
ポケットに蜘蛛をしのばせ
ハエの羽を瓶にあつめて
アブをつぶしてそれを一列にならべる

彼女には友だちがいて
彼はとなりの家にすんでいる
ふたりは外のようすに耳をすます
彼は彼女にいくつそばかすがあるかもご承知
彼女は彼のひげをかきむしる

彼女はおっきな本に落書きし
ページとページをのりでくっつける
ふたりはでっかいカラスをみた
カラスが舞いおりてきて
彼女はそれにさわった

今日は彼女の誕生日
ふたりは葉巻をふかす
彼は花の首かざりをもってきて
鳥をいっぴき彼女のパンツにぬいつける

ふたりは葉巻をふかしながら
バスタブに横たわり
かたわらには花の首かざり

神さま(シュガーキューブス)

神さまなんていない
もしいるのなら
頭上に広がる空の
分厚い雲のなかにいるはず
神さまは
どんなものより白く
どんなものよりきれい
神さまはわたしに手をのばしたがっている

神さまなんていない
もしいるのなら
いつも気配をかんじるはず
神さまは
広々とした部屋で準備をととのえ
そっと手ぶくろをはずす
神さまはわたしにさわりたがっている

わたしは路地をひっそりとあるいている
襟を引っぱると
それがどんどん大きくなる

いちど
神さまに会ったことがある
ほんとうにおどろきだった
神さまはぼくをバスタブにいれて
ぼくをぴかぴかにあらった
ほんとうに
きれいに

宇宙を創造するには
禁断の果実を味わわなくちゃ

神さまは「やあ」といった
ぼくも「やあ」とかえした
ぼくはまだ
ぴかぴかのままだった

神さまなんていない
もしいるのなら
雲からおりてきたがっているはず
さいしょはマジパンでできた指が
それから大理石の手が
どんなものよりひっそりと
どんなものよりしずかに
わたしにしのびよってくる

襟はどんどん大きくなって
しまいには手になった
手は
胸からはじめて
それからゆっくりと下にさがっていく

ぼくはすべて見とおした
と思った
神さまは
白くもなければ
ふわふわと宙を舞うわけでもない
それどころか
神さまはもみあげをのばしていて
そう
もみあげをのばしていて
おまけに髪型はリーゼント
神さまは「やあ」といった
ぼくも「やあ」とかえした
ぼくはまだ
きれいなまま
ぴかぴかなまま
ぼくはおどろいた
きっときみだっておどろくはず

神さま
神さま
神さまなんていない

神さま
神さま
神さまなんていない